大阪社保協通信

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1278号 2024.2.20

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大阪社会保障推進協議会

  

2024年度介護報酬改定 処遇改善加算 これではペテンのような話だ!令和6年度2.5%・令和7年度2.0%ベースアップの根拠も示さず〜「事業者の経営努力で可能」と言い放つ厚労省

 216日、中央社保協主催の介護保険処遇改善加算問題での厚生労働省レクチャーがハイブリッドで開催されました。現地参加した日下部雅喜・大阪社保協介護保険対策委員長から以下のように報告がありますので全文掲載します。

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 2月16日 2024年度介護報酬改定の処遇改善加算問題での厚生労働省老健局のレクチャーを受けました。(主催は中央社保協 介護・障害部会。説明者は厚生労働省老健局老人保健課の担当者主査)

 1月22日公表された2024年度介護報酬改定案では、「介護現場で働く方々にとって、令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップへと確実につながるよう加算率の引上げを行う」とされています。具体的には、介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算について、現行の各加算・各区分の要件及び加算率を組み合わせた4段階の「介護職員等処遇改善加算」に一本化するというものです。

 

処遇改善加算一本化   例)最上位    2.1 ポイントしか増えない 

  【 現  行 】                   【 改定後(246月〜) 】

介護職員処遇改善加算(T)      13.7

介護職員等特定処遇改善加算(T)   6.3%     介護職員等処遇改善加算(T) 24.5

介護職員等ベースアップ等支援加算   2.4

     合  計         22.4

 

 問題の「加算率」は、現行の3つの加算の最上位の合計「22.4%」を、新加算Tでは「24.5%」へと2.1ポイント引き上げられますが、2年間にわたって2.5%+2.0%=4.5%もベースアップ(介護労働者の基本賃金の一律引上げ)ができるような加算率ではありません。

 

 

2.5%ベースアップ」の計算根拠示せず

 社保協側は、「処遇改善加算率が2.1ポイントしか増えないのに、なぜ令和6年度に2.5%もベースアップが可能なのか、どういう計算になるのか示して欲しい」と質問しました。

 厚労省の回答は、「加算率は2.1ポイントの引き上げだが、総報酬に率をかけることなり、事業経営は人件費がすべてではないので、2.1%総収入が増えれば、事業所の自主的な賃金改善分も含めるとベースアップ自体は2.5%引き上げが可能だと考えている」というものでした。重ねて、「概算でいいから、2.5%ベースアップ可能な計算根拠を示してほしい」と質問しましたが「お示しするような計算根拠はない」との答弁でした。

次年度2.0%ベースアップは経営努力で?!

 さらに、「加算率引き上げは2024年度だけなのに、次年度(2025年度)の『2.0%ベースアップ』の原資はどこからもってくるのか」と質問すると、厚労省担当者は「鋭い質問ですね」と言いながら「事業者の経営努力とか改定による繰越金活用とかで可能ではないかと考える」との答弁で、まったく根拠のない数字であることが明らかになりました。

 報酬改定の説明資料で、2.5%+2.0%のベースアップへと「確実につながる」としながら、1年目の計算根拠も示せず、2年目に至っては「事業者の経営努力」に期待するというのです。ここまでくるとこれは、ペテンのような話と言わざるを得ません。

 社保協側は、「大臣折衝で、3年目の対応については、『処遇改善の実施状況等や財源とあわせて令和8年度予算編成過程で検討する』としているが、2年目からそのような対応をしないと連続したベースアップはできないのではないか」と質問しました。これについて厚労省は「状況を把握して…」と言うだけで、何らまともな答弁はしませんでした。

訪問介護の引下げで処遇はどうなる

 ホームヘルパーの基本報酬(訪問介護費)が、2.2%〜3.0%引き下げられ、処遇改善加算の加算率引き上げ(2.1ポイント)があっても、マイナスになることについて、社保協側は、基本報酬が引き下げられる訪問介護では、処遇改善にならず処遇悪化になり、「介護現場で働く方々の処遇改善を着実に行いつつ…」とした大臣折衝事項が守られていないことを指摘しました。

 厚労省は、「訪問介護は介護職員がほとんどを占めることから処遇改善加算の効果も大きい。経営状況を見ると収支差率のプラス幅が大きい」と返答しました。

 社保協側が、「事業所の格差が大きく、小規模事業所は収支差率は1%台しかなく、一律引下げは理解できない」と追及しましたが、厚労省は「介護報酬は平均的な収支差で決める」と実態を無視した答弁に終始しました。

処遇改善加算があってもマイナス

 社保協側は、訪問介護は基本報酬引き下げにより、処遇改善加算一本化による加算率アップがあったとしてもマイナスになること、例えば、基本報酬で12単位マイナスの1時間以上の身体介護では、処遇改善加算の加算率が上がっても6単位のマイナスになり、現行最上位の加算取得の場合はマイナスしかないことを指摘しました。

 

例) 身体介護3(1時間〜)

    現行                  改定後(6月〜)

579単位×3加算の最上位の加算率22.4%     567単位×新加算のT24.5

   =709単位                  =703単位   ▲6単位

 

 厚労省は「訪問介護には他の加算(特定事業所加算等)もあり、下がるとは限らない」などと述べましたが、今回の報酬改定で特定事業所加算の加算率は据え置かれたままで、新設された口腔連携強化加算(月150単位)以外、プラス要素はありません。

 社保協側は、訪問介護の基本報酬引き下げが、ホームヘルパーの人手不足をますます厳しくし、事業所の廃業や撤退により地域の介護基盤を失わせるものであり、見直しをするよう求めましたが、厚労省は「ご意見は担当に伝えます」としか返答しませんでした。

加算取得率の改善の数値目標はない!?

 厚労省は、処遇改善加算一本化により、事務負担が軽減され手続きも簡素化されることで加算取得率向上をめざし、さまざまな支援策を講じていくという説明を繰り返しました。しかし、「事業規模別の加算取得率の数値目標はあるのか」との質問には、「具体的な数値目標は立てていない」との返答でした。またその手立ても「今後通知等でお示しする」というものでした。

「基本賃金」が本当に上がるのか?

 今回、厚労省は、明確に処遇改善の目標を「ベースアップ」(基本賃金の一律引上げを意味する表現)として基本賃金引上げそのものを図ることを目標にしてきました。しかし、新加算W(14.5%)の2分の1を「月額賃金」(基本給以外の手当を含む)の改善に充てるという現行の「ベースアップ等支援加算」の水準にとどまっています。

 厚労省は、「2.5%ベースアップ」目標は、あくまで基本賃金引上げであることを強調しながら、実際の配分においては、手当での改善も事業者の選択肢としては可能とするなど非常にあいまいで無責任な返答に終始しました。

また、新処遇改善加算は、介護職員以外への柔軟な配分は可能としながら、加算率は、サービス毎の介護職員数によっているため、介護職員以外を賃金改善の対象にした場合、全体の改善水準が低下するという問題も何ら改善されていません。

ごまかしの処遇改善でなく抜本的改善が必要

 厚労省レクチャーを通じて、今回の処遇改善一本化は、その目標とする「ベースアップ率」そのものに根拠のないペテンのようなものであり、基本賃金の引き上げにつながるかどうかも疑わしいものであることが明らかになりました。さらに、訪問介護の基本報酬引き下げは、処遇悪化と人手不足に拍車をかけ、介護崩壊を招きかねないものであるにもかかわず、その危機感すら持っていない無責任な姿勢も浮き彫りになりました。

 訪問介護の基本報酬引き下げを中止させ、引上げを実現することが喫緊の課題です。そして、このようなごまかしの処遇改善でなく、介護労働者全員の賃金を、全産業平均水準以上に、全額国庫負担で引き上げる抜本的な改善を目指しましょう。

参考

大臣折衝事項(20231220日)

既存の加算の一本化による新たな処遇改善加算の創設に当たっては、今般新たに追加措置する処遇改善分を活用し、介護現場で働く方々にとって、令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップへと確実につながるよう、配分方法の工夫を行う。あわせて、今回の改定が、介護職員の処遇改善に与える効果について、実態を把握する。

・ 今回の報酬改定では、処遇改善分について2年分を措置し、3年目の対応については、上記の実態把握を通じた処遇改善の実施状況等や財源とあわせて令和8年度予算編成過程で検討する。

 

令和6年度介護報酬改定における改定事項について

.(1)@ 介護職員の処遇改善@

概要

○ 介護現場で働く方々にとって、令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップへと確実につながるよう加算率の引上げを行う。

○ 介護職員等の確保に向けて、介護職員の処遇改善のための措置ができるだけ多くの事業所に活用されるよう推進する観点から、介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算について、現行の各加算・各区分の要件及び加算率を組み合わせた4段階の「介護職員等処遇改善加算」に一本化を行う。

※ 一本化後の加算については、事業所内での柔軟な職種間配分を認める。また、人材確保に向けてより効果的な要件とする等の観点から、月額賃金の改善に関する要件及び職場環境等要件を見直す。

 

明日、介護報酬学習会開催。厚労省へのパブコメ書き込みもします。ぜひご参加ください。

☆日時 221()1830 2030

☆リアル会場大阪民医連(中央区南本町2-1-8創建本町ビル2階) ハイブリット併用

☆講師  

居宅関係:日下部雅喜氏(大阪社保協介護保険対策委員長)

施設関係:山本智光氏(社会福祉法人こばと会特別養護老人ホームいのこの里施設長) 

☆事前申し込みをされた方にはzoomURLが送られます。

☆チラシはこちら  

https://www.osaka-syahokyo.com/top/skkg0221.pdf