大阪社保協通信   1184号 2018.6.25

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高額介護保険料にはまったく対策なし、交付金欲しさに国追随の危険な姿勢〜621日大阪市介護保険交渉

6月21日午後、大阪市高齢者施策部(介護保険課・高齢福祉課)との交渉(協議)が行われました。この交渉は、3月14日に大阪社保協、年金者組合大阪府本部、大生連、介護保険料に怒る一揆の会が共同で提出した7項目の要求について行われました。

 大阪市側は、金井介護保険課長代理、大北認知症施策担当課長代理らが応対、交渉団には、大阪社保協など4団体と介護総がかり行動からも参加がありました。

★「高い」と認めながら、対策は皆無

 大阪市の第7期介護保険料は、基準額で年95,124円、月7,927円と、市では全国一高額になり、大阪府内では突出して1番高くなっています。この介護保険料について、交渉団は、数字を上げて見直しを求めました。

【全国高額介護保険料ワースト16

順位

都道府県

市町村

基準月額

1

福島県

葛尾村

9,800

2

福島県

双葉町

8,976

3

東京都

青ヶ島村

8,700

4

福島県

大熊町

8,500

5

秋田県

五城目町

8,400

5

福島県

浪江町

6

青森県

東北町

8,380

7

福島県

飯舘村

8,297

8

岩手県

西和賀町

8,100

9

福島県

三島町

8,00

9

福島県

川内村

10

大阪府

大阪市

7,927

11

秋田県

井川町

7,900

12

和歌山県

上富田町

7,829

13

青森県

六戸町

7,760

14

奈良県

黒滝村

7,700

14

和歌山県

みなべ町

14

鹿児島県

瀬戸内町

15

和歌山県

かつらぎ町

7,650

16

青森県

三戸町

7,620

 

大阪市側は「決して安いと思ってはいません」と認めながらも何ら対策をとろうとせず、「ご負担をお願いせざるを得ない」と繰り返しました。わずかな年金で暮らす高齢者にとって、大阪市の介護保険料額は、年金1か月〜2か月分がまるまる保険料としてとられてしまう実態を示し、大阪市の見解を求めましたが、大阪市は、「制度的にこうした保険料になった、負担をお願いせざるを得ない」と繰り返すばかりでした。

交渉団は、給付費が増大したのであれば一般財源から繰り入れて保険料を抑えるべきではないかと迫りましたが、「それはできない」の一点張りでした。

現に一般財源を繰り入れて保険料を押さえている自治体があることを示し、「一般財源繰り入れは法で禁じられているのか」と質問すると、大阪市側は「法的には繰り入れは可能」「禁じられているわけでない」とは認めました。しかし、「いつまでどれだけ繰り入れなければならないのかわからないものをやるわけにはいかない」「市としてはしない方針だ」などとかたくなに拒否しました。

交渉団は、「低所得で一人暮らしの高齢者が多い大阪市では、すでに介護保険制度の財源の枠組みでは限界にきていることは明らかであり、大阪市として一般財源投入を決断すべき」と重ねて要請しました。

なお、大阪市がホームページに掲載している「保険料説明書」が数か所の誤り(年度、人数)があるにもかかわらず、4月に掲載されてから訂正せず放置していることについて指摘し「市民に誠意をもって説明する態度でない。すぐに訂正せよ」と求め、訂正を約束させ、即日実行させました。

★保険料段階、減免でも改善姿勢見せず

 大阪市の介護保険料段階は「11段階」で、今回まったく細分化の努力を行っていません。このため、最高は「合計所得700万円以上 基準額×2.0」にとどまっています。一方、もっとも低所得の「第1段階」・「第2段階」は、軽減後の国基準が「基準額×0.45」に対し、大阪市は「基準額×0.5」と高くなっており、「富める者に優しく貧しい者に過酷」な設定となっています。

 これについて追及すると、大阪市は「基準額が17.3%引き上げと大幅なので、他の段階を細分化するとさらに上がってしまいできなかった」、「高所得層の率をあまり高くすると理解を得られない」などと答えました。さらに、何故できないか追及すると、「第7期はできないが3年後の第8期に向けては検討したい」などと、能天気なことを言い出す始末でした。

★独自減免制度の改善すら行わず

 大阪市は生活困窮者に対する独自減免制度がありますが、7期に一切改善なしで、年収基準も2012年度から改善なし、さらに「滞納者除外要件」もあります。交渉では、さらなる改善がなぜできないか、追求しました。

とくに、基準収入額(1人世帯年収150万円)の計算にあたり「収入から控除する範囲」について質問しましたが、大阪市側はすぐには答えられず、最終的に「医療費」が控除対象になっていないことを認めました。交渉団は、医療費について控除対象に入れるように要請し、合わせて、「滞納者」を減免から排除していることについても是正を求めましたが、大阪市側は明確な回答はありませんでした。

★「保険者機能強化推進交付金(財政的インセンティブ)の確保」問題

 介護保険制度改定で今年度から、国が市町村を「採点」し、「自立支援策」に熱心に取り組んだ度合いによって「交付金」(保険者機能強化推進交付金200億円)を配る制度ができました。大阪市は第7期介護保険料に設定にあたって、一人当たり「52円分」の「交付金の確保に努める」としています。大阪市全体で4億円以上の交付金を得る計算になります。

 交渉では、どのような取組によって獲得する見通しか、52円の計算根拠を明らかにするよう求めました。大阪市は「金額は被保険者数で計算した」というだけで、具体的な根拠は示しませんでした。「交付金が獲得できなかったらどうするのか」と聞くと、「その時は大阪市が一般税源で埋めなければならないと考えています」と回答しました。保険料抑制のための一般財源投入はかたくなに拒否しながら、交付金が獲得できない時は一般財源で穴埋めするというつじつまの合わない答弁でした。

 交渉団は、「大阪市として、交付金を得るために、要介護認定を抑制するようなことはないか」と質問しましたが、大阪市側は「そのようなことはまったく考えていない」と返答。さらに、「現在でも状態が変わっていないのに要介護認定が厳しくなって軽く出ているという実態があるが、どうなのか」と尋ねると、「要介護認定の基準は変わっていないのでそのようなことはないはず。もしあれば認定の担当に伝えておく」と答えるにとどまりました。「目標達成を重視するあまり、介護サービス等利用者の要介護認定の抑制やサービス利用を阻害することのないよう取り組んでまいります。」(大阪市回答書)というものの、交付金欲しさに国に追随する姿勢がありありと見える態度でした。

★「自立支援型地域ケア会議」はどうする

大阪市は第7期介護保険事業計画では、今年度から、「ケアマネジャーが作成する要支援者のケアプランを検討するために多職種による会議(自立支援型地域ケア会議)を全地域包括支援センターで月1回以上実施する」としています。

交渉では、いつからどのようなケアプランがその対象になるのか、何件検討するのか、会議の構成メンバーなどについて質問しました。

大阪市側は、「各方面の意見を調整中であり、今年度実施はまだできていない」としながら、「今年9月には『自立支援型地域ケア会議』を開きたい」としました。ただ、「すぐに66の全地域包括支援センターで開催というのは無理ではないか」「件数もそんなに多くは最初からできない。1件か2件くらいからだろう」と答えました。会議の構成メンバーについては、「区役所の担当者も入る。医師も参加」としました。

交渉団は。「利用者の自立支援について検討するのに利用者本人は参加できないのか」と質問すると「利用者本人は参加できない」、「会議での検討結果はケアマネジャー・包括が利用者に説明する」と回答しました。

★生活援助ケアプラン届出問題

国の制度改定により、一定の回数以上の訪問介護(生活援助中心型)を位置づけたケアプランを作成した場合は、市に届出することが義務化され、今年10月から実施されます。市はケアプランを地域ケア会議等で検証し、必要に応じて是正を促すとされています。

これについて説明を求めると大阪市側は、「『必要に応じサービス内容の是正を指導』とあるので、その根拠を国に聞いているところである」「10月から生活援助ケアプランの届出がはじまるが、具体的にどう体制を作るかは決まっていない」と答えました。さらに、「対象となる件数は1300件くらい(今年3月実績)」であることも明らかにしました。

交渉でのやり取りの中で、大阪市側は「一度検証すればいいのか、ケアプラン更新のたびに検証するのかも決まっていない」「区役所で届出を受け付けるが、その後どうさばくかはまだ決まっていない」と述べるにとどまりました。

交渉団は、利用者の意向とケアマネジャーの裁量を尊重し、訪問介護(生活援助)の回数の制限につながるような対応をしないよう求めました。             (日下部雅喜・介護保険対策委員長)

 

大阪市の第1号介護保険料等に関する要求書の要求項目と大阪市文書回答】

3月14日要求書

5月22日文書回答

.大阪市の高齢者の負担能力の限界をはるかに超えた介護保険料引き上げ案を撤回し、再検討すること

平成 29 12 月のパブリックコメントでの第 7 期計画の素案においてお示ししました第 1 号被保険者の保険料基準額 7,845 円については、計画期間における要介護認定者数や介護サービスの利用者数の伸びなどを実績に基づき推計し、介護保険サービスの提供などに必要な費用を見込んだ上で試算を行いました。保険料基準額が上昇する要因として、単身の高齢者が多い中、認定率が高い 75 歳以上の高齢者の増加に伴い、要介護認定者数及び介護保険サービス利用者の増加が見込まれることに加え、第 1 号被保険者の費用負担割合の変更(22%⇒23%)等の影響があり介護保険給付費の増加に至ったものです。その後、利用者負担割合(2割⇒3割)、保険者機能強化推進交付金の導入といった減要素を加味するも、介護報酬改定(+0.54%)、平成 31 10 月に予定されている消費税引き上げに伴う介護報酬改定、介護福祉士の処遇改善に伴う介護報酬改定などの増要素となる各影響を介護保険給付費に加味し、第 7 期の保険料基準額を 7,927 円と算出し、市議会の承認を得たところです。

介護保険制度は、高齢者の介護を社会全体で支え合う制度であり、その理念に基づき、介護保険料の設定につきましても、介護保険法施行令の規定により、本人の所得状況等だけでなく、世帯全員の課税状況によって、きめの細かい保険料段階を設定することとなっており、本市においても、きめ細かな保険料段階の設定を行う観点から、本人及び世帯の市町村民税の課税状況や合計所得金額等により、第 6 期に引き続き、11 段階の負担割合(保険料率)を定め、定額の保険料をご負担していただくこととしております。

また、低所得者の保険料軽減として、国の別途公費による低所得者軽減措置に伴い、本市においても平成 27 年度から第1段階及び第2段階に対する保険料割合の軽減を実施しております。加えて、本市では、保険料段階が第1段階から第4段階で、世帯全員が市町村民税非課税で生活に困窮しておられる方に、第4段階の保険料の2分の1に相当する額まで軽減する制度を設け、実施しております。

なお、介護保険の運営に必要な費用にかかる公費負担と保険料負担の割合は、法令により定められているところですが、介護保険制度の安定的な運営を図るため、将来にわたって地方自治体の財政負担が過重とならないよう、国の責任において十分な財政措置を講じるとともに、高齢化の進展による給付費の増加により介護保険料の大幅な改定を余儀なくされていることから、介護給付費の財源に占める国の負担割合を引き上げることにより、第1号被保険者の保険料の高騰を抑制する財政支援措置を講じることを国に対し、要望しているところです。

.介護給付費増に見合う収入を確保するために、国に負担増を求めること。国庫負担増が実現するまでの間は大阪市が一般財源を活用して介護保険料を抑制すること

介護保険制度の安定的な運営を図るため、将来にわたって地方自治体の財政負担が過重とならないよう、国の責任において十分な財政措置を講じるとともに、高齢化の進展による給付費の増加により介護保険料の大幅な改定を余儀なくされていることから、介護給付費の財源に占める国の負担割合を引き上げることにより、第 1 号被保険者の保険料の高騰を抑制する財政支援措置を講じることを国に対し要望しているところです。

介護保険の運営に必要な費用にかかる公費負担と保険料負担の割合は、法令により定められているため、制度的に決められている以上に一般会計から繰入することは、負担と給付の関係を不明確にするもので、納税されている国民の理解が得られないとして、国や府においても適当でないとされております。

.保険料の所得段階を増やし、保険料率について高額所得者には高く、低所得者については軽減を行うこと。とりわけ、第1・第2段階については少なくとも国基準以下にとすること

第1号被保険者(65歳以上)の方の介護保険料につきましては、介護保険法施行令第38条、39条により段階別の保険料を設定するよう規定されており、国においては、標準段階を9段階に区分しておりますが、本市においては、本人及び世帯の市町村民税の課税状況や合計所得金額等により、きめ細かな設定を行う観点から11段階の負担割合(保険料率)を定め、保険料をご負担いただいております。

なお、第6期介護保険料の改定において、国の定める基準に従い、本市の第1・第2段階の保険料を統一したうえで、別途公費による低所得者の保険料軽減を行い、平成27年度からは、保険料率を第5期の0.56から0.50とし、国の軽減幅(0.05)よりも大きい軽減率とする改定を行ったところです。

また、本市では、保険料段階が第1段階から第4段階で、世帯全員が市町村民税非課税で生活に困窮しておられる方に、第4段階の保険料の2分の1に相当する額に軽減する制度を設け、実施しております。

.低所得者に対する減免制度を拡充すること。とくに、年収150万円以下の高齢者は介護保険料を全額免除すること

第1号被保険者(65 歳以上)の方の介護保険料につきましては、介護保険法施行令第 38 条、39 条により段階別の保険料を設定するよう規定されており、国においては、標準段階を9段階に区分しておりますが、本市においては、本人及び世帯の市町村民税の課税状況や合計所得金額等により、きめ細かな設定を行う観点から 11 段階の負担割合(保険料率)を定め、定額の保険料をご負担いただいております。

また、本市では、世帯全員が市町村民税非課税で生活に困窮している方については、保険料の軽減(生活困窮者軽減)を行っていますが、厚生労働省の指導により市町村が条例に基づき保険料の減免を行う場合は、「資産を考慮せず、収入のみに着目して一律に減免することは不適当である」という原則の主旨を踏まえて実施することになっています。なお、保険料の軽減(生活困窮者軽減)につきましては、平成 24 年度より収入要件を緩和しております。また、低所得者の保険料軽減として、平成 27 年度からは保険料段階が第1段階・第2段階の方へ新たに公費による保険料軽減を行っております。

.「保険者機能強化推進交付金(財政的インセンティブ)の確保」は、どのような取組によって獲得する見通しであるのか明らかにすること。評価指標に追随して要介護認定抑制やサービス利用阻害を行わないこと

平成 29年成立した地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律による改正後の介護保険法において、国は、市町村及び都道府県に対し、自立支援・重度化防止等に関する取組みを支援するため、予算の範囲内において、交付金(保険者機能強化推進交付金)を交付することとされました。

同交付金については、平成 29 12 月、厚生労働省老健局介護保険計画課からの事務連絡によりその趣旨等が示され、着実にその効果が発揮されるよう適切な評価指標等を設定し、市町村及び都道府県の自立支援・重度化防止等に関する取組みを推進することとされています。また、交付金の交付方法等の詳細についての基本的な考え方についても、平成 30 年2月 28 日に同課 からの事務連絡により示されたところです。

平成 30 年2月 28 日に示されている市町村分の「平成 30 年度保険者機能強化推進交付金に係る評価指標(以下、「評価指標」という。)につきましては、大きくは、(1)PDCAサイクルの活用による保険者機能の強化に向けた体制等の構築について、その状況等を把握しているもの、(2)自立支援、重度化防止等に資する施策の推進について、その取組みの状況を評価するもの、(3)介護保険の安定化に資する施策の推進として、@介護給付の適正化に関する取組みや、A介護人材の確保に関する取組みを評価するものなどであり、その評価対象となる個々の項目や内容についても概ね定まっています。これまで、本市においては、国の社会保障審議会介護保険部会で示されてきた「評価指標(案)」を参考にしながら、介護予防・重度化防止等に資する取組みとその目標について、第 7 期計画案に掲載したところではありますが、今回、この「評価指標」が示されたことで、本市の取組みが、再度、「評価指標」の内容に該当しているかどうか、その状況について再度確認する必要があります。

また、平成 30 年度に取り組むべき内容のものがあれば、取組みの可否も含めて再度検討する必要があると考えております。「評価指標」のいずれの項目につきましても、本市の高齢者施策や介護保険事業を推進する上で、重要なものばかりであると考えておりますが、「評価指標」の目標への達成を重視するあまり、介護サービス等利用者の要介護認定の抑制やサービス利用を阻害することのないよう取り組んでまいります。

.自立支援型地域ケア会議の全地域包括支援センター開催については行わないこと。ケアマネジメント支援は、ケアマネジャーの意見を聞いた上で検討し具体化すること

自立支援型地域ケア会議は、医療・介護など各分野の専門職から自立支援・介護予防の観点を踏まえたケアマネジメントに関する助言を得ることで、生活行為の課題解決や状態の改善など、高齢者本人のQOLの向上、自己実現に資するケアマネジメントを、担当ケアマネジャーが実施できるように支援する会議であり、本市においても各地域包括支援センターでこの取組を進めていくこととしています。

自立支援型地域ケア会議の実施にあたっては、高齢者本人の自己決定を前提に、高齢者の状態を踏まえた適切な目標の設定とケアプランの作成など、高齢者の自立に資するケアマネジメントが適切に行われるよう、地域のケアマネジャーのケアマネジメントの支援に努めてまいります。

.訪問介護(生活援助)の回数制限を行わず、利用者の意向とケアマネジャーの裁量を尊重すること

介護保険制度改正により、平成30年度から訪問回数の多いケアプランについては、利用者の自立支援・重度化防止や地域資源の有効活用の観点から、市町村が確認し、必要に応じて是正を促していくことが適正であり、ケアマネジャーが、統計的に見て通常のケアプランよりかけ離れた回数の訪問介護(生活援助中心型)を位置付ける場合には、市町村にケアプランを届け出ることとされました。

本市におきましても、制度改正の主旨を踏まえ、適正な制度運用に努めてまいります。