大阪社保協FAX通信   1033号 2013.3.25                                       

 

維新・「大阪都構想」の介護保険版「大阪府介護保険広域化提言」 市町村の合意得られず破たん〜現実無視の「広域化」と負担増路線に未来はない。

 橋下・維新の会が強引にすすめる「大阪都構想」の介護保険版である「大阪府介護保険広域化提言」が事実上破たんしました。

★大阪府単一の介護保険ねらう

 大阪府は、「介護保険広域化」研究会報告を2012年8月に公表していました。内容は、現在市町村ごとの介護保険を「大阪府単一」に統合し、一本の保険料とし、自治体ごとの保険料減免も廃止するというものでした。そのため国に対し、都道府県が保険者になることが可能なように「法改正」を求め、さらに介護保険制度改革として「課税者の利用者負担3割」案まで示すなどのムチャクチャなものでした。しかも、大阪府と市長会・町村長会共同で「提言」をまとめようとしていました。

 これは、「維新の会」が2011年の大阪府市ダブル選挙で「大阪都構想」とともに「国保・介護保険の広域化」を公約し、2012年2月の大阪府議会で維新の会の質問に対し、松井知事が検討を約束したことが発端となった経過からも明らかなように、「大阪都構想の『介護保険版』」というべきものでした。同時に国に対して、利用者負担割合の引き上げ(課税者3割負担、ケアマネジメント3割負担)など、制度改悪もけしかけるという重大な内容も含んでいました。

 

 大阪府の「提言案」〜国への制度提言(案)

 持続可能な介護保険制度とするためには、法改正等が必要であり、国への制度提言を行い、具現化を目指す。

 ○市町村との適切な役割分担のもと、「都道府県が保険者となり制度運営を担うことを可能とする案」について検討されたい。

 ○低所得者に配慮した利用者負担割合の見直しなど「給付と負担のあり方」及び将来の給付費の増加を見通した「安定した介護保険制度の運営」について検討されたい。

 

★「広域化」撤回を要請

 大阪社保協は、いち早くこの危険性について明らかにし、昨年10月25日に、大阪府と市長会・町村長会に対し、「介護保険広域化の検討を中止せよ」と要請を行いました。

 

介護保険「広域化」の検討をやめ国に対して負担増を要請することを求める要望書

【要望の趣旨】

 大阪府で検討している「介護保険広域化」については、基礎的自治体の権限を奪い、住民や高齢者不在の介護保険運営としようとするものである。

 府内の圧倒的多数の市町村で介護保険料の引き上げになり、独自減免制度も全面廃止されるなど、高齢者にさらなる負担を課すものである。さらに、給付抑制のため利用者負担増と軽度者切り捨てなどを国に求めるなど許しがたい内容となっている。

さらに、国においては「地域包括ケア」など、より地域密着の小さい単位でのサービス提供を目指しており、「広域化」「都道府県単位化」はそうした方向にも逆行するものであり、断じて容認できない。

ついては、以下の内容について強く要望する。

【要望項目】

1. 「介護保険広域化」研究会報告書を撤回し、検討を中止すること。

2. 介護ニーズにこたえた介護保険制度とし、保険料を抑制するために府として国に対し負担増を求めること。

 

 

★市長会の同意得られず

 要請の場での話し合いでは、大阪府の担当課は「まだ結論はでていない。これから調整する。」と返答し、市長会・町村長会事務局は「反対されている首長もおられ、今後どうなるか分からない。」と答えていました。私たちは、府民や関係者不在の「広域化」「負担増」提言を行なわないよう改めて要請していました。

今年2月25日に市長会事務局と大阪府に説明を求めると、その後、市長会側から意見も出され大阪府の当初の「提言案」は全面的に変わり、「介護保険広域化」の法改正提言もなくなったことが明らかになりました。わずかに「将来的には保険者の規模の拡大」などを含め検討という表現にとどまりました。

 

「広域化」の文字も消えた提言案〜持続可能な介護保険制度の確立に向けた提言

国における制度改善や抜本的な改革

6. 財政調整交付金制度の改善や国負担金の枠外での新たな調整制度の創設を検討するとともに、消費税増税分を財源とした公費負担割合のあり方や、将来的には保険者の規模の拡大などを含め、安定した制度運営のあり方について検討する。

府民不在、現場無視の「広域化提言」破たんの示すもの

 もともとこの「大阪府介護保険広域化提言案」なるものは、維新の会の「市町村でバラバラの国保・介護保険を一本にする」という乱暴な「公約」に端を発したものであり、自治体の介護保険の実態も介護現場も無視したものでした。橋下・維新がしゃにむに突き進む「大阪都構想」に対応したもので、市町村の介護保険課長も参加する「広域化研究会」では、強引に「提言案」をまとめたものの最終的に市町村側の賛同が得られず、破たんしたものです。

 維新の会の「大阪都構想」に対応して出された大阪府の「介護保険広域化」でしたが、自治体現場の実態を無視した強引なやり方には未来がないことを示しています。

 高い介護保険料など介護保険制度が「限界」を迎えている中で、大阪府・市長会・町村長会の「提言」は、あえて国庫負担増を求めず、「消費税増税分を財源とした公費負担割合のあり方」の検討を求めるという内容となっています。 この間、大阪市や大阪府議会でも、国に対し負担割合引き上げを求める「意見書」が採択され、全国市長会なども国庫負担増を求めている中で、あえて「消費税増税分を財源とした」とすることは、重大な後退です。

 社会保障・税一体改革の一環として、介護保険制度改悪が検討されている中で、自治体が国庫負担増を求め、自ら制度充実のために努力する立場ことが求められています。

 今後、政府に対する運動とともに大阪府と各自治体に対する要求がますます重要になります。

資料

大阪府・市長会・町村長会の「持続可能な介護保険制度に関する提言 平成25年3月」

T.持続可能な介護保険制度の確立に向けた提言

 

国における制度改善や抜本的な改革

【高齢者の自立支援に資するケアマネジメント・サービス提供の徹底について】

1.    高齢者の自立支援に資するケアマネジメントの徹底に向け、ケアマネジャーや居宅介護支援事業所の公正・中立性の確保や、質の高いサービスを提供できるよう資格取得前にケアマネジャーとしての実務経験等を組み込むような研修のあり方について検討する。

 また、ケアマネジャー及びサービス事業者が高齢者の自立支援に資する質の高いサービスを提供したと認められる場合にはそれを評価・開示し、利用者の選択に資する仕組みを検討する。

 

【要介護認定の適正化などについて】

2. 要介護認定制度における保険者の事務負担や経費の軽減を図るため、認定の有効期間の一層の延長や認定審査会の簡略化など手続きの簡素化、要介護度区分の単純化など抜本的な制度の見直しについて検討する。

 また、認定調査員の資格を厳格化するなど、調査員の質の向上のための制度改正について検討する。

 

【保険料の収納率向上について】

3. 保険料の収納率向上のため、65歳到達後速やかに年金からの特別徴収を開始できるようにするなど、特別徴収を円滑に行うための制度の見直しを行う。

 

【給付と負担のあり方について】

4. 介護保険など社会保険制度で行うべきサービスと、生活保護など社会保障制度、及び行政やNPO、事業者、住民などによる社会福祉サービスとのバランス(役割分担)を踏まえた給付の見直しを進める。

また、利用者負担割合や高額介護(介護予防)サービス費の見直し、保険料の賦課にあたっては資産の保有状況を反映する仕組みの導入、個人単位での賦課、控除後の所得を賦課の基準とするなど、高齢者の負担能力に応じた適切な負担のあり方について検討する。

上記の見直しにあたっては、定額制と定率制を併用した保険料賦課や、社福軽減を一般施策として制度化するなど利用料の負担軽減制度の充実を検討するとともに、補足給付の認知症高齢者グループホーム・小規模多機能型居宅介護等への対象の拡大や、介護保険制度の枠外で社会保障政策の一環と位置づけるなど、低所得者への負担軽減制度を講じる。

 

【将来にわたり安定した介護保険制度の運営について】

5. 介護人材の処遇改善や人材確保に向け、長期的な視点に立った継続的な方策について検討する。

また、地域区分が近接市町村間で大きく異なる場合は、人材の確保・定着、福祉サービス提供基盤の整備(事業者の参入)及び保険料設定に地域格差を引き起こす要因の一つとなることから、地域の実情を十分に考慮し、こうした課題の解消を図る。また、地域区分により保険料設定に地域格差が生じないような方策を検討する。

6. 財政調整交付金制度の改善や国負担金の枠外での新たな調整制度の創設を検討するとともに、消費税増税分を財源とした公費負担割合のあり方や、将来的には保険者の規模の拡大などを含め、安定した制度運営のあり方について検討する。

 

国保滞納処分問題大学習会

 

2011年度自治体キャラバン行動以降の私たちのたたかいで、大阪府の生活保護世帯への滞納処分の停止通知、さらに大阪市の無財産・生活困窮世帯への滞納処分の停止通知など、全国的にも画期的な成果が生まれています。

しかしながら、自治体による一方的な差押は後を絶ちません。

今一度、この1年間の地域でのたたかいを整理し、みんなで考えあう学習会を企画しました。ぜひご参加ください。

 

日時 2013年4月27日()午後1時半〜4時半

会場 大商連会館大会議室

企画 講演1. 大阪でのたたかいについての総括と現時点での到達点について(仮称) 楠晋一弁護士(京橋共同法律事務所)

    活動報告・意見交換

★主催   大阪社会保障推進協議会(大阪社保協)

Tel06-6354-8662 fax06-6357-0846

★共催   大阪商工団体連合会(大商連)

★参加費  無料、大阪社保協「住民運動のための国保ハンドブック2012」を使いますのでお持ちください。ない方は当日販売いたしますのでご購入ください(1冊800円)

 

    

★資料作成の関係上、下記申込書記入の上、事前に必ず大阪社保協あてfax06-6357-0846にお送りください。

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2013.4.27国保滞納処分問題大学習会に参加します。

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